群馬県指定史跡榊原康政の墓(館林市善導寺)。
墓石の形状と戒名を記録し、戒名禅定門・居士について考察します。
榊原康政
榊原長政の次男として三河国に生まれ、13歳の時松平元康(後の徳川家康)に見出され、胡椒となりました。以後数々の戦いで武功を重ね、徳川四天王(酒井忠次・本多忠勝・榊原康政・井伊直政)と言われる側近中の側近になります。
1590年(天正18年)家康の関東入国に際し、本多忠勝に大多喜10万石、榊原康政に館林10万石、井伊直政に高崎12万石を与え、要所を守らせました(酒井忠次は既に没)。
関ケ原の戦いでは秀忠軍の軍艦を勤めています。上田城(真田昌幸)攻めを中断し関が原に向いますが、合戦に遅参した秀忠に家康は大激怒を受けます。康政のとりなしで事なきを得て、伏見城での対面が許され、秀忠は康政に大変感謝したそうです。

5人の墓が並んで立っています。

左端は榊原康政死去に際し、殉死した側近南直道の墓。康政墓の左に寄り添っています。
1.93mの宝篋印塔で、戒名は腹誉道切禅定門。

左から2本目、榊原康政の墓。
武勇だけではなく、利根川・渡良瀬川の治水、日光往還道の整備などにも尽力しました。
老中、関東総奉行にも任命されています。1606年(慶長11年)に没しました。墓は高さ5.46メートルの宝篋印塔です。
戒名は養林院殿上誉見向大禅定門。

左から3本目。康政長男大須賀忠正の墓。2.72cmの五輪塔。
華馨院殿泰誉曳安大居士。

左から4番目。館林藩2代藩主榊原康勝(3男)の墓。
2.73mの五輪塔で、心光院殿長誉了英大禅定門。
養子に出た長男大須賀忠正より康勝の五輪塔の方が1cm高い事、忠正の戒名が華馨院殿泰誉曳安大居士、康勝が心光院殿長誉了英大禅定門である事も館林藩主の威厳を示していそうです。

康政側室花房殿の墓。4.37mの宝篋印塔。周光院殿葉誉青荷大姉。2代藩主康勝の生母。
花房殿の位号が「大禅定尼」でなかったのは何故なのでしょう?
正室大須賀殿は長男大須賀忠政、次男榊原忠長を産みました。長男は正室出身の大須賀家を相続し、掛川の横須賀6万石初代藩主となり、忠長は早世。
したがって館林藩は花房殿が生母の康勝が継ぎました。
5人の戒名を再掲します。
・初代藩主康政 養林院殿上誉見向大禅定門
・康政側室花房殿 周光院殿葉誉青荷大姉
・2代藩主康勝 心光院殿長誉了英大禅定門
・横須賀藩主忠正 華馨院殿泰誉曳安大居士
・康政側近南直道 腹誉道切禅定門
榊原家の変遷
館林藩主 初代康政
館林藩主 2代康勝(康政次男)。無嗣没のため、幕府は大須賀忠正の子を戻し榊原忠次とする。
館林藩主 3代忠次
白河藩主 忠次(1643~1649年)
姫路藩主 忠次(1649~1667年)
姫路藩主 4代政房 康勝(康政3男:庶子)の子勝直を旗本に取り上げる事に成功。
5代政倫
村上藩主 政倫
6代政邦 直勝の子
姫路藩主 政邦
7代政祐 政邦の甥
8代政岑 政祐の末期養子となり姫路藩主。乱行により蟄居。長男政純が後を継ぐ。
9代政純
高田藩主 政純 10歳で早逝の為、政永が身代わり擁立され、公式には同一人物とされた。
10代政敦
11代政令
12代政養
13代政愛(政恒)
14代政敬 最後の藩主。初代藩知事。
考 察
禅定門・禅門について・・・禅定門・禅門は居士より下位、人によっては居士・信士より下位の戒名であるという見解があります。
関根達夫さんは「位号が普及するようになったのは江戸時代で、成人男子は位階の高い順に大居士・居士・大禅定門・禅定門・信士となる。成人女子は清大姉・大姉・大禅定尼・禅定尼・信女となる」(「墓石が語る江戸時代」吉川弘文館、2016年)と述べています。
末尾のYouTubeは関西の住職にアンケートした結果禅定門・禅定尼は住職の思いにより幅があるけれど「位の高い順に大居士・清大姉・居士・大姉・禅定門・禅定尼、清信士・清信女・信士・信女となるようだ」と述べており、関根達夫さんと同じ見解です。また、小林大二さんは、「居士・大姉の下位に信士・信女があり、その下に禅定門・禅定尼がある」(「差別戒名の歴史」雄山閣出版、1987年)と述べています。
しかし、榊原康政とその関係者4人の位号から、館林藩では大禅定門が大居士より上位と認識されていたのは間違いない思います。館林藩では上位から大禅定門・大居士・禅定門・居士・信士という順番になりそうです。
徐々に掲載していきますが、禅定門の位号を持つ大名墓・有力者の墓は少なくない数あるので、上記見解とは異なり禅定門は最上位の位号であるとも言えそうです。
ご注意
私は関根達夫さん小林大二さんの研究を批判している訳でも、この動画を批判している訳ではないのでご注意ください。前者2人は学術調査の結果から述べていますし、YouTube動画のお二人も人数はわかりませんが関西のご住職に取材した結果を述べています。
単純に違う見解を持っているという事だけですので、ご注意ください。

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